できるまで

毎日の生活のなかで多用される、使いやすく、美しい器をめざして。

 日本独自の食文化において、汁椀や箸などは昔から漆器が使われてきましたが、近年は「割れることがなく扱いやすそうだから」「安価だから」といっ た理由で、陶磁器やプラスチック製などの器が多くを占めるようになっています。そうした現状をふまえて、秋田県漆器工業協同組合では、「日常の器 として普段使いでき」かつ「美しく」「大人から子供まで、すべての人が心地よく使える」漆器を開発することに決めました。プロジェクトは、秋田県 公立美術大学の山本毅教授と菅原香織助手の監修のもとに進めました。
 開発にあたっては、使う人の気持を反映するためにモニター調査を行いました。漆器セットとして、まずは飯椀、汁椀、小鉢、小皿、多用椀を制作 し、第一次試作品のモニター調査を2000年6月に実施しました。第一次試用品は重さ、口当たり、手触りの点では高評価を得ましたが、持ちやすさ や見た目の点で慣れ親しんだ食器に比べて違和感があるという声もあり、問題点の改良を行いました。このときの作品が、今回開発した「たなごころ」 の前身にあたる椀(4種)、皿(3種)の7点でした。

 第二次試作品では「これまでの食生活になじむ食器であることと、持ちやすさをさり気なく助けるデザイン」をコンセプトに、「形状・色・アイテ ム・素材・機能」の5つの面で検討を重ねました。大きさを小ぶりにしたり、明るい色を採用、アイテム数を増やすなどの変更を加え、すべての人にや さしい食器、「たなごころ」と「ひとさじ」が、完成を実現しました。
 本事業は伝統工芸品産業支援補助金事業のもとに計画され、過去に開発された「たなごころ」をブラッシュアップするとともに、コストがかかり量産化が困難とされていたカトラリー「ひとさじ」の制作を同時に進めました。日常での使用をメインに据えながらも、さらに一歩進んで高齢者が自力で食 事できる介助用品としても利用いただける付加価値の高い製品づくりを目指しました。

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